連載コラム(46)うつ病とブレーキの関係・1

 

<46>うつ病とブレーキの関係

うつ病とは、エネルギーが枯渇すると起きる疾患である。⾞に例えればガソリンが空になった状態だ。⾞なら、ガソリンを補給すればまた⾛れるようになる。「うつ病」で⾔えば、仕事を休んだりして「休息」や「睡眠」を⼗分にとり、エネルギーを補給すればいい。

とは⾔え、「うつ病」は診断の難しい疾患の⼀つだ。また、「うつ病」と診断されて治療を受けている患者さんの中で、適切な治療を受けている⽅は、3割程度だとさえ⾔われている。

つまり世間で思われている以上に診断や治療や対応が難しい病気なのである。当然、⻑引いたり、再発を繰り返したりしやすい。何年も通院しているのに、先が⾒通せないこともある。

そこで、教科書とは別の視点から、私なりの気づきを書いてみたい。私が今回伝えたいこと、それは、エネルギー不⾜の観点ではなく、⾞で⾔えば、ブレーキの存在である。

なかなか治らない⽅の中に、「ガソリンはある程度たまったものの、ブレーキがかかっているために」⾞が動かない⽅もいるのではないか、と思うようになった。そこに気づかないまま、いくら休養をとっても、いくら抗うつ剤を飲み続けていても状況は進展しない。それはまるで左⾜でブレーキを踏みながら、右⾜でアクセルを踏んでいるようなものである。会社には⾏けないが休⽇なら遊べるという、いわゆる「新型うつ病」も嫌なことにはブレーキがかかる可能性がある。そのような場合には、ブレーキの解明が必要なのではないかと思う。

本来、⽣命体そのものは元気になりたいと思っている。私たちの⾝体の細胞⼀つ⼀つは本能的に健康な状態を⽬指している。⾃⼰治癒⼒と⾔われるものだ。それがうまく働かないのは、それを阻害するものがあるのではないかと仮定してみよう。

その⼀つが「ブレーキ説」である。ブレーキはどんなときにかかるだろうか。例えば、⼤きな不安があるとき。何らかの葛藤が解決されていないとき。あれやこれやと迷いがあるときなどに、⼈はいずれも動けなくなる。また、「⾃分にできるはずがない」「どうせうまくいくわけがない」などといったさまざまな「思い込み」がブレーキになっている場合もあるだろう。

こうしてみると、うつ病に限らず、誰もが多かれ少なかれブレーキを持っている。意識しているいないにかかわらず、そうやって⾃分で⾃分を⽌めているのだと⾔える。つまり、ブレーキとは、案外、⾃分の中にあるものなのかもしれない。

では、このブレーキはどうやったら外せるのか。⼈⽣を快適に安全に運転するために⽋かせない「ブレーキの上⼿な使い⽅や外し⽅」については、次回も続けて考えてみたい。