こころの病とつきあうために・10 睡眠

睡眠障害というのは、寝つきが悪い、夜中に目覚めてねつけない、朝超早くめざめてしまう。

このどれかが一ケ月以上続いたときを言います。

食欲にはあまり目をくれない私も、睡眠障害があるかないかだけは、ぜったい! はずしません。

睡眠障害がある場合と、ない場合では、対応がまったく違ってきます。

どんなに失意のどんぞこにあっても、悩みが深くても、ねむれるなら、ただの心配事です。

でも、悩みや心配事がなくても、睡眠障害があれば 立派なこころの病気です。

悩みや心配事があっただけで食欲は落ちますが、睡眠障害はでません。

単なる落ち込みと、うつ病との違いは、睡眠障害があるかないかで判断します。

睡眠って 不思議ですね。心の持ち方は努力で多少変えることができても、寝つけないのはもうどうしようも

ありませんね。

私も寝つきが悪いほうですが、本当に、どんなに努力しても工夫しても、これだけは自分の力ではどうしようも

ないとつくづく思います。でも 反対に 横になったら 5分でねむれる、昼でも夜でも、という人を何人か

知っています。

何を隠そう、わたしの夫や夫の妹は、昼でも夜でも、会話しているその最中でも、返事がない、と思ったら

もう寝てます。会話の最中に寝てるって、どういうこと?って 思ってしまいますが、そういう性分なんです。

一方わたしときたら、真夜中の運転・助手席に座っていてもねむれません。かえって神経が尖る。

夫や夫の妹は、よく言えば健康的で、性格がさっぱりしている、悪く言えば、単純で物事を深く考えようとしてない。

わたしは、今日考えても仕方のないことを あれやこれや考えたりして とにかくムダに頭を忙しくしているんですね。

それでも、わたしがうつ病ではない証拠があります。

もうブログなんて書こうとしないで、夜はぼーっとの~んびりと過ごすようにしていれば、ねつきが少しづつ

良くなってきます。また 軽い安定剤の一錠や 軽い睡眠薬の一錠くらいで ねむれます(かなりよく使います)

わたしが睡眠薬を使う理由は、やはり 夜も少しは生産的なことをしていたいからです。生活の質をあげたい時。

でも やめよう、と決めれば ぜんぜん使わなくてもすみます。その点が、病気と違う点です。

本物の睡眠障害という場合は、一錠の安定剤や睡眠薬くらいでは 寝つけません。

2時3時までねむれない、なんてことが続くことがあったら、かなり重症の精神的な病気です。

ふだんよくねむれている人が、ねつきが悪くなった場合でも、要注意です。

さて、睡眠障害の治療は睡眠薬だと思いますか? 違います。まず安定剤です。基本の病気に効く安定剤を処方して

車でいえば スピードを落としてやってから ごく少量の睡眠薬を使う(ブレ-キをかける)のが基本です。

スピードを落とさずにブレーキをかけたら 車は反転してしまいます。

たくさんのお医者さんが 安定剤の工夫をしないまま、睡眠薬を増やしていきます、これは邪道です。

ぜったい邪道です。でも精神科医でさえ、睡眠薬を増やしていく医師のほうが多いのが不思議です。

そのほうが安直だからですね。

どんな精神病でも、まず 睡眠を十分にとれるようにする、これが基本。というより 一に睡眠、二に睡眠、

三にも 四にも睡眠です。

睡眠障害は 薬で治すしかほとんど方法がないので、医師と相談してやっていくしかないと思います。

しかし、睡眠障害が改善された後(薬を使っていても)に残ったもの。残った症状。

これはもう、「障害」です。

医者まかせにして良くなるものではない。 自分の弱みを知り、何らかの修正をこころみ、自分を変えていかないと

周囲に適応していけない「障害」だと考えてください。

また逆に、薬をもらっているのに、睡眠障害が かなり長期に続く場合も「障害」です。

「障害」という意味は、薬だけで改善できない、生活上のなんらかの欠陥があるという意味です。

たとえば昼間ねているとか、夜になるとゲームをしたくなる、とか 人が寝ているときに落ち着くから寝ない、など。

つまり、精神科医の治療の中で、薬の調節が必要な時期というのは ほんの短い一時期であって、あとは

薬を服用しながら「障害」や「生活の仕方」や「考え方」や「いき方」の問題をどう扱っていくかという問題になります。

でも ほとんどの精神科医は 薬の調節をしたあとは、どうですか?ねむれてますか。食べれてますか、という

問いかけに明け暮れています。わたしも時間がかぎられるときにはそうせざるを得ないので そうなっています。

あるいは患者さんの訴えをよく聞いてくれる優しい医師もたくさんいますが、ただ聞くだけでは、あまり治療効果が

ありません。やはり何らかの問いかけ、患者さんが 自分を見直すきっかけを与えてくれる治療が一番の治療。

でもでも、言います。

変わりたくない患者さんもいっぱいおられます。

変わりたくない患者さんのほうが多いかもしれない。病気に逃げている患者さんは 変わりたい患者さんの数より

はるかに多いです。

人間というものは、本来は「変わりたくない」ものです。保守的であることのほうが自然で 本来の姿です。

ですから わたしも、変わりたくないと本能的に思っている患者さんに 余計なことは言いません。

ただただ優しく聞くだけ。それでいいのだと思っています。

また いtつ どんな変化が訪れるかわからない。それをじっと待つのも、医者の仕事と心得て。