しあわせ論(56)心を鍛えて癖をなおそう

前回、「⼼の癖」について書いたところ、読者の⽅から「そ の⾒つけ⽅を教えてほしい」というお声をいただいた。

そこで それを書いてみたいと思ったが、これがなかなか難しい。⾃分 でわかるものではない。また、周りの⼈には⾒えるとか、精神 科医だったらわかるとか、そんなものでもない。  そこでちょっと遠回りになるかもしれないが、⼈間の性格を ⻑所と短所と⼼の癖、という三つの観点から考えてみたい。

ま ず⻑所から。意外かもしれないが、⼈は⾃分の⻑所には気づき にくい。なぜなら「何の苦もなく当たり前にできること」が、 その⼈にとっての⻑所となるので、当たり前過ぎて気づきにく く、⼈にほめられたりして⾃覚することが多い。

⼀⽅、⾃分の「できないこと」や「不得意なこと」は苦痛を伴い、⾃分でも強く意識する ので、⾃分の⽋点はよく⾒えるのだ。⼈間が「⾃信」より「⾃信喪失」の⽅をより感じやす いのは、そういうこととも関連する。

では、⼼の癖はどうか。その答えは、先⽇の⼭梨⽇⽇新聞の「体幹鍛えて良い姿勢」とい う記事が、ヒントになった。

「姿勢を良くしようと意識しても姿勢は良くならない。若い頃 から、そして普段から姿勢を維持する筋⾁を鍛え続けて初めて姿勢が良くなる」というもの だった。

⽬からウロコとはこのことだ。

⼼の癖も同じ。わかったところで、直そうと思ったところ で直るものではない。筋⾁を鍛えるように、⼼を鍛え続ける。普段から⼼を柔軟にする訓練 を⾏うことこそ⼤事なのだ。

どうやって鍛えるかというと、⼈の中で困難に出合ってもまれることである。それも「離 れたくても簡単には離れられない⼈間関係の中で」とつけ加えよう。

夫婦であるとか親⼦。 あるいは上司と部下といった⼀緒に働く同僚たち。そういう離れられない関係の中で、⼈は ゲームのように同じようなけんかや嫌な思いをしがちだ。

お⾦がいっぱいあるから働かなくていいよ、気ままで⾃由なひとり暮らしをしていいよ、 と⾔われてみたい気はする。しかしそれでは⼼が成⻑できない。

⼈は離れられない⼈間関 係、例えば結婚、例えば⼦育て、例えばきょうだい、例えば会社などでもまれ、⼼を鍛え続 けていかないと成⻑できないのだ。

それはまた家庭を持ったり、働いたりする意味でもある。苦労はあるが「そうか。こうや ってお給料までいただいて、鍛えていただいて。⼆重にお得」と気をとりなおす⽇もあって いい。

というわけで、今回は、年とってから⼼に悪い癖がつかないように、若い頃から⼈間 関係の中でもまれることをいとわずにやりましょう、というお話でした。もちろん、お年寄 りになってももまれていた⽅がいいですよ。