寒くなりました。
昨夜と今朝、とうとう暖房を入れました。
あばら屋は大変です。
病院の事務室で、風ででも飛んだか、一枚のはがきが落ちていた。
認知症で数年以上も前から入院されている老婦人に届いたものかと思った。
昔から病院の住所でハガキが届いていた。
700キロも離れたところに住む元恋人からだと聞いていた。
一方通行の便りは数年以上も続いているということなのだろう。
はっとして胸をつかれた。
同棲していた恋人だったというから、正式の結婚と違い、会うこともままならないだろう。
老婦人のほうは、誰からハガキがきているかを認識する力がとうにない。
もちろん返事も書かないと思う。
このはがきは認識できない本人でなく、家族に手渡されるのだろうか。
それでも達筆なそのはがきは、律儀に届く。
数年前と変わらぬ温かい筆致であった。
ちょっとせつなくなった。
涙で字がかすんでしまった。
夫婦関係の中で丁々発止とやるのも仲良しの証拠だろうが。
こんな関係もいとおしくせつないな、と思った。
しあわせの中でぬくぬくと生きていると。
世の中にはこんなせつない状況があることもつい忘れてしまうと思った。
人はやっぱり、いつも誰か大切な人に語りかけながら生きているのかなあと思います。
返事を求めているわけじゃないんですね、
語りかける誰かを求めているのかもしれません。