年を重ねても若々しくいられる秘訣(ひけつ)って何だと思いますか。
そのキーワードの⼀つは「⼼のしなやかさや頭の柔軟さ」です。(身体も同じかもしれませんね)
もう⼀つは「意欲や好奇⼼」を挙げたいと思います。
今回は「しなやかさ」のほうを取り上げてみたいと思います。
心のしなやかさってどうやってそれを鍛えることができるでしょうか。患者さんが⼼を病むときを考えてみました。
それは、環境や対⼈関係が変わったり、傷ついたり、何らかの変化があったときにあらわれます。つまり変化に対応できないとき、⼈の⼼は折れたり病んだりするでしょう?
それを裏返すと、トラブルや悩みのときこそ、脳に刺激を与え、⾃分を変える絶好のチャンスと⾔えるるでしょう。
⾄近な例を挙げてみます。
わが家で新しく買い替えたピアノのことで夫婦の意⾒が異なったことがあります。
ピアノは夫婦共通の趣味です。その扱いで夫がAだと主張し、私は内⼼Bだと思い、考えが真っ向から対⽴したのでした。
私はけんかが嫌で対⽴をあらわにすることを避け、だんまり戦術に⼊りました。しかし、お⾦の⼯⾯で苦労したことを思えば、どうしても⼼が晴れないのです。
そこで、86歳になる昔のピアノの先⽣に電話で相談することにしました。
彼⼥は「難しい問題ね。ご主⼈には彼なりの確固たるお考えがあるのでしょう。あなたの考えも、今は聞いていただけないと思うよ。それを⾔い募って争えば、たった2⼈の夫婦暮らしが不愉快なものになるでしょう。ピアノの扱い⽅の問題は、あなたにとって⼈⽣の⼀⼤事なの︖ でなかったらここはひとつ、気持ちを切り替えて忘れるのもあり。それが嫌なら、どちらが正しいかはさておき、あなたが今できることをやることね」と明快に⾔われました。
それは、私なりのやり⽅で弾いてあげれば、ピアノは響くという⽅法でした。
私は⼿に⼊れた時の苦労やどちらが正しいかばかりにこだわり、それしか⾒ずに悩みました。
でも冷静に考えれば、私のやれることは他にまだあったのです。
⼼がすっきりし、考えの違いは棚上げにしたままですのに、不思議とピアノを弾く時間が⼤切に思えるようになったのです。
⽼婦⼈の想像⼒、経験に基づいた多⾯的な視点、押すだけでも引くだけでもない柔軟な対応。私はそのアドバイスに救われ、だんまり戦術でかたくなになっていた⼼が柔らかくなり、前向きになれました。乗り越えたのだと思えました。
うっとうしい夫婦げんかや職場のいざこざ、そして⼼の病気を得ることなどは、視点を変え、脳に刺激を与えるチャンス到来なのだと思っています。
そして⽼いて⾝体は衰えても、⽼婦⼈のように、周りの⼈に的確なアドバイスを与えることのできる若々しい⼈であり得るという事実。それは、誰にとっても希望であり⽬標でもあると思います。