誰にでもおきる? 依存症について

昔、若いころ、県立病院に勤めていたので「アルコール依存症」病棟がありました。

お酒ってなかなかやめられないんですよね。だったら「ほどほどに飲みましょう」って答えになりますね。

でもね。「ほどほど」ほど難しいものはないんです。「ほどほどにする」って、とにかくゼッタイ難しいです。目の前に美味しい食べ物があって、どれだけでも食べれる状況で。でも10分の1しか食べてはいけないって言われたら、我慢できますか? 

なかったらいいんですよ。なかったらほしくないんです。目の前にないものを想像して「ほしい!ほしい!」って思って想像しても、胸かきむしられるほどの辛さはおきないです。

でもね。目の前に見せられて「これだけ」って言われて、指くわえて見てる、ってすごくすごくつらいんですよ。

だからアルコール依存症の治療は「断酒」しかありません。それしかないんです。ほどほどに飲みましょうってないんです。でも、みんなたいていは「ほどどに出来たらいいよね」って思います。ぜったい無理です。

人間関係もね、一緒です。いつだったか受けもち患者さんが少なかったので、全員に出電話番号を教えたことがあります。緊急のことがあったらかけていいよってね。そして結果ですが・・・・・・・全員から、かかってきました。緊急ではないのに、緊急よりはるか手前の状態で。

その時つくづく思いました。餌ぶら下げることの罪なこと。なので、今はどこの病院でも、患者さんから電話あってもぜったあい医師につなぎません。友人の医師に電話してさえ、つないでもらえなかったことがあります。ちょっとやり過ぎ?ってさすがに思いますがね。名前名乗っているのですから。

家族でも同じです。優し過ぎるのはNGです。甘えちゃうんです。家族の甘えってあたり前でしょ?って思いますか。いえいえ、スポイルしちゃったり。そもそも、その人をダメにしちゃいます。

私は自立心もあるし、しっかり者ですけど、一方で依存心もしっかりあります。だから優しくされたら、そうですね。とことん甘えてしまいそうで怖いです。

だから家族であって夫婦でも親子でも。

もほどほどの優しさで接するのが誰にとっても「愛」です。

それがホンモノの「愛」ですよ。