都はるみのご主人のこと

都はるみと事実婚をしていた音楽プロヂューサーの男性が、自死されたと新聞にでていたのは一ケ月

ほど前のことだ。都はるみとその夫は、私と同じ時代を駆け抜けてきた全共闘世代だ。都はるみが「普

 通のおばさんになりたい」と宣言して引退したのは、もう24年も前のことだ。子供を産み、家庭を守る女

性のことを「普通のおばさん」と呼んだことから、普通のおばさんたちから ひんしゅくを買った。しかし仕

事を持つ女性の気持ちとして、十分に理解できた。

さて昨日のこと、婦人公論に ふたりと親交のあった人が寄稿しているのを目にしたので読んだ。彼が亡くなった4月

初旬のその夜、はるみさんは広島で公演だった。彼はといえば、薄曇りの東京で、親しい音楽関係者と

酒を飲んでいた。酒場を出たとき、気温は13度。心地良い微風を吹いていた夜の街を彼はまっすぐ自

宅マンションに帰った。彼は最近沈みがちだったというが、その夜は妙に明るかったという。一種の高揚

状態にあったのだろうか。

自宅マンションに帰ってからも、行動は冷静。一週間くらい前から本を整理していたらしいが、その夜は

はるみさんとの想い出のつまったアルバムを眺めていたらしい。

亡くなったあと、都はるみがメッセージを出したという、「思い当たることがなく、事故死なのではないかと

思わざるを得ないほどです」という内容だった。

30年もの長い間、夫婦同様、いや夫婦より濃い愛情関係にあったろいう「妻」が思い当たることがないと

いう。もちろん悩みがあったこと、悩みは相当深いことくらいは想像できただろう。しかしそれが死ぬほど

のものとは思わなかったという意味だとわたしは解釈した。

この話を聞いてわたしが思ったこと。それは彼は「うつ病にかかっていたのではないか」ということだ。う

つ病は、これほど身近な人にとってもわかりにくい。身近であればあるほどわかりにくい場合があるし、

身近でないとそれはそれなりに又わかりにくいところがある。

精神科医が診断したらわかると思うが、精神科医だって、診察室にやってきたから診断するのである。

自分が「うつ病」になったり家族がなっていても 案外「灯台もと暗し」なのが こころの病気。

やはり地道ではあっても「啓蒙あるのみ」だという気がする。 特に人と関わる職業の人くらいは「うつ病

かも?」とわかっていたらどんなにたくさんの人が救われるだろう。

亡くなった中村氏は音楽的才能に恵まれ、理論派であるのにエネルギッシュで激情的な人だったらし

い。「全共闘に関わりながら、結局おれは逃げたことになる。いまだ負い目を感じている」と語っていたこ

とからわかるように、純粋で自分に厳しい人だ。そんな人は生き辛さを抱いていることが多い。

最近酒量が増えていたこと。杯を重ねるほどにはるみさんに対していい募る傾向があったこと。またここ

数年特に酒量が増え、毎晩飲んでは自棄的になっていたこと。

酒から「うつ」がきたか、酒が「うつ」を悪化させたかは定かではない。しかし、酒はしばしば心の病気を

悪化させる。

前にも書いたが、うつ病の人は自分をうつ病だと思っていず、自分を責め、自分の殻に閉じこもる傾向

がある。本人が訴えないので まわりにもわかりにく。そのことをわかっていてほしい。

じゃあ どうすればいいかについてはまたす少しづつ書いていきたい。