独立で得るもの、失うもの

知人が55歳で会社をやめ、趣味を仕事にして独立した。
仕事は順調、マイペースでいかにも楽しそうである。
それでも彼は「組織にいたほうが楽しかった」という。
それを聞いて、思うことがある。

医師というのもまた、誰もが開業を夢みる職業のひとつだ。
開業したいと一度も夢見ない医師は少ないのではないか。
わたしもそのひとり。15年前から10年くらい、開業していた。

家庭の事情で再び勤務医になって、7年。

両方やってみて思うこと「勤務医のほうが面白い」ということ。

組織にいるということは、開業しているよりはるかに大変なことが多い。
そもそも大変なことが多いから、独立したくなるのだから。
でも苦労の種が、一番の喜びの種であることは、「不肖の子が一番かわいい」
ということわざからもうかがえる。
組織というのは「やめたくなる」ほどの大変さがまた、 楽しみの種なのだ。

たとえば、たくさんの人に囲まれていろんな刺激を受ける。
つぎつぎと難題がふりかかり、みんなでワイワイとこなしていくうちに、人の情にも触れる。
ひとりやふたりで仕事をしていると味わえない楽しみだ。

両方やったから初めてわかることだけど、

「会社」って大変だけど、面白い。

今、医師が100人近くもいる大きな病院で働いていて、困難は絶えず訪れるし、
我慢しなければいけないことも はるかに多いのだけど、
「刺激がある」という一点でもって やはりひとりで仕事しているより楽しいと感じている。

どんなに情報が発達する世の中になっても、
人が人から受ける刺激や情報以上のものはないのではないだろうか。

わたしの目標、それは「組織の中にあって自分らしさを発揮すること」