「先⽣、朝起きた時はいいんです。でも⼣⽅から気分が憂鬱になります」「へえ、朝はいいのね。うつ病の⼈は朝の気分の⽅が憂鬱なんだよ」「じゃあ、僕の憂鬱感は何ですか」「疲れですよ。きっとやり過ぎです。疲れてくるんです」「でもやっていることは普通です」「他の⼈には普通でも、今のあなたにとってはやり過ぎなんじゃない」とまあ、患者さんとの会話は続いていきます。
うつ病の症状に「朝の気分が悪く、⼣⽅から夜にかけて気持ちが楽になる」というものがあります。
ですから朝起きた瞬間の気分を聞くのは、精神科医にとってとても⼤切な質問なのです。
朝は眠いし、会社もあるしで、どうしても気持ちが重くなりがちです。しかし、ここで⾔う「朝の気分」とは、そういうことを思う暇もない⽬覚めの⼀瞬のことです。
これは意識してみると誰にでもあります。
朝起きた瞬間の気分はその⼈にとって「その時期の基底の気分」です。
そしてそれは薬ですぐに改善できるものではない基調の気分です。
うつ病が良くなるに従い、⾃然に改善されていくものなので、うつ病改善の⽬安としても使えるものです。
これらは⼀般の⼈にとってもバロメーターとなります。うつ病でなくても、⽬覚めた瞬間、嫌な気分のする⽅がいる。また、嫌な気分のする日もあるでしょう。
そんな場合も基底の気分は「うつ」だと考えていいと思います。
例えばストレスいっぱいの環境で働いている⽅とか。
家族の病気で介護が⼤変な⽅などが例として挙げられるでしょう。
いずれも⾃分に負荷をかけない考え⽅や暮らし⽅を⼿探りするといいのじゃないかと思います。
さて、今⽇の状態は昨⽇の結果であるというのが私の考えです。
つまり、今⽇の調⼦が悪い時に、今⽇の出来事の中から原因を⾒つけるのは筋違いだという意味です。
昨⽇起きた出来事、昨⽇の過ごし⽅の中にすでに無理があるのだという考え方です。
ここからがポイント!
「今⽇」という⽇は「昨⽇の結果」「昨⽇の続き」です。
昨⽇が「うつ病の⾃分」なら、今⽇の朝起きた瞬間から憂鬱なのは当たり前なのです。
「昨⽇の⾃分が無理していた」なら、寝ている間にすっきり解消できる程度の疲れでないかぎり、朝の気分は悪いと思われます。⾝体の調⼦も悪いでしょう。
「今⽇という⽇」はいろんな意味で「昨⽇の結果」であると知れば、「なぜ、こんなに具合が悪いのだろう」と悩んだ時、昨⽇、何か⾃分は無理しなかったか、何か意に添わないことをやり過ぎなかったか、という視点で考えることがヒントになって、⾃分を知ることにつながっていくでしょう。
毎⽇の積み重ねの結果、私たちは「今⽇」という⽇を迎えた。明⽇を思い煩うことなく今⽇という⽇を⼤切に使えば、きっと⾃然にいい明⽇につながっていくだろうと思います。