私のビョーキ

私のビョーキは「完全癖」だ。

患者さんに「あなたは完全癖だ」というと、完全でないところもいっぱいあります、と言う。

でもそれはあたり前で、すべてに完全なわけでなくて、どこかの一部で妙に完全を望むのだ。

「完全癖」の人も他の部分では、いい加減で大雑把で、トンデモナク ダラシナイ。

あまりにもダラシナイ性格だからこそ、ある一部にこだわって完全を望んでしまえるのだ。

わたしはものすごく大雑把でいい加減な性格なのに、仕事の一部にかぎってだけ「完全」を望む。

わたしの診察は完全予約制なので、来院されないとすぐわかってしまう。

予約をすっぽかされることはめったにないのだが、たまに来られない患者さんがいると すごく気になってしまう。

何が気になるかというと、精神科の薬は処方がとてもむつかしいので、「処方を間違えたかな」と気になるのだ。

毎日毎日、何十人も処方していたら、量が多すぎたり少な過ぎたりはあたり前だ。

ところが [「完全に」処方しないと 気がすまないのだ。

昨日も、予約の時間に来ない患者さんがいた。

処方の量が気になっていた方だったので 処方量が多過ぎて、ぶっ倒れていたら、と 

昼ごはんも喉を通らないほど、気になった。

なんのことはない。診察時間を間違えていただけで、午後遅くに来られた。

わたしはほっとした。他の医師たちは ここまで気にしないという。やっぱり私のはビョーキだ。

それにしても、精神科の薬ほど 効くものはない。

しかし劇薬だから 本当に気を使う。 最近、医師賠償保険というのに加入することにした。