子供のころからずっと、いつも人より半歩先を歩いて来た。
一歩じゃなく半歩というのがビミョーで、有名にも立派にも金持ちにもならなかった。
また、出る杭は打たれるという諺があるが、頭2つも3つも出る能力があればよかった。
頭ひとつ分しか出ていないのがまた微妙で、いつも打たれっぱなしだった。
だからこの年になってまだ 新米面ひっさげて病院内をうろつく運命に甘んじている。
ちょっと悔しいと思う日も、ひそかに涙する日もある。
☆ ☆ ☆
わたしが精神科医になったころは、精神科医なんて一番嫌われる職業のひとつだった。
患者さんから水をかけられたり、葡萄の皮を投げつけられたこともある。
もちろん病気のなせる技だから、腹は立たない。
患者さんの親から「あなた(精神科医)にだけはかかりたくなかった」と
にらみつけられたことも一度や二度ではない。
でも、インフォームド コンセントや セカンド オピニオンなどという言葉ができるはるか以前から
そういうことを大切にしてきた。わたしにとってはあたり前のことだった。誰に習ったわけではない。
普通の感覚持った 普通の人だったからに過ぎない。
わたしがHPを作った10年前は、精神科医のHPはほんのわずか。いや、ほとんどなかった。
それがどうだろう。
最近再開したこのブログにも、「精神科医」という検索でやって来る方が多くて驚いている。
そこで調べてみたら 精神科医のブログが山ほど(というのは大げさだが)ある。
そして、私など足元にも。。。。。という立派なブログも。
だけど、精神科医がもてはやされる時代なんて、ぜんぜんいい時代なんかじゃない。
わたしはそう思う。
ただ今、精神科医歴37年。
時代と共に生きてきたという実感だけはたしかにある。
そして時代の変化に敏感で、人間のいろんなことがこわいほど見えることもある。
☆ ☆ ☆
今、わたしにとっての「半歩先」は何だろうと思う日々である。
「精神科医です」と胸をはって言うなんてはずかしいことと思っていたが、今もそれは変わらない。
今、目の前にいるひとりの患者さんを大事にする、ただ普通の医者でありたいと思っている。
このブログは、そんなわたしのデトックスである。