28年目の感激

夫が仕事を兼ねて、あるお宅に伺うというので、休みだった私も

くっついて行きました。

28年前に建てられた別荘です。

Aさんが買われ、二年使ってBさんが買われ、Bさんは20年使っておられたそうです。

でもこの10年くらいは来ることも少なくなり、家はほこりにまみれ、ネズミまで出てたとか。

最近 Cさんが買われたそうです。

一家総出で大掃除をされ、床も丁寧に窓も優しくふいてとても喜んで使われているとか。

東京から毎週のように来られ、お母様や息子さん、孫さんまで愛して使っておられる

そうです。

28年も経た木のおうちってどんななんだろう。

見て見たくて私もお邪魔虫になったのでした。

 

ゆったりと落ち着く雰囲気の中で、お茶と珈琲をいただきました。

このおうち、とてもきれいに磨かれています。

なんでしょう、この家を見つける力って。

多分、多くの人は使い古された価値のない家として見過ごしてしまう。

愛して、磨いてくれた方がいるから輝いているのです。

それが一見してわかり、感動しました。

「家を愛する」ってこおゆうことなの? そんな感じです。

わが家では、水などこぼすことも多く、木を大切にする夫から叱られてばかりです。

ちょっぴり反省したのでした。

もっと大事に磨いてあげよう(でも、暇ないか。夫が磨けばいいのだ)

一時間ほどして帰りましたが、帰りがけにわたしたち夫婦の写真まで撮っていただきました。

           ☆      ☆     ☆

何を隠そう、この家は夫が28年前に建てた初めての家なのです。

親の洋品店を手伝っていた夫が、わずかな貯金と妻(私ではない)と乳飲み子を2人連れて

信州に引っ越してきました。

とにかく家を建てて、そこで小物でも売ろう、と思って建て始めたらしいです。

シャトレーゼなんかで働きながら週末を利用して、ひとりこつこつ二年間を費して建てた

ログハウスなのです。

建築の知識など、何ひとつなく、お金もなく。

でも静岡に行って木を見、北海道から木を取り寄せ、考え考え作った素人の家なのです。

器用ですねえ、感心します。

ステンドグラスの窓も自前なのでした。

ほんと「口先男」ではない夫を私は心から尊敬しています。

重い階段も梁も全部、自分ひとりで持ち上げ、しつらえたそうです。

どうしたら家が建つかわからなくて、知恵と手だけを頼りに建てたそうです。

ログはあまりに大変で、二軒目から別の工法にしていますから唯一のログですね。

思い出のある初めて建てた家。

建てた家に思いを残さない夫が、この家だけは別の深い思いがあるといいます。

夫はこの家が突然売れてしまい、つぎに建てた家も売れ、それで工務店をやり

大工兼建築士となりました。

今、最後の仕事をしています。

「今後は悠々自適ですか?」って Cさんに聞かれました。

いや。。。あのぉ、商売が下手で借金など山みたいにありますから・・・ビミョウな立場です。

私にいじめられてばかりで「イノチが縮む」と申しております。

まあ、好きなことだけを仕事にしてきた人は・・・・・・わがままですから・・・・・・

私など、好きであろうがなかろうが、病院に行きますからねえ。