才能について

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人の能力って、咲かせようと思って咲かせられるもの

ではない、というのが私の説。

人の能力

1、自分には自分の才能が見えない、他人が見つけてくれる。

2、気がついたら咲いていた、ということが多い。

いずれにしても咲かせようと思って咲かせられるものではない。

      ☆     ☆     ☆

建築で才能を発揮した夫は、

「もっと芸術的なことでもうひと花咲かせたい」が口癖だ。

そして、あれやこれやに手を出し続けていた。

私はううんざりしながらそれを見るこの8年間だった。

ところが最近、思わぬところから「緑の新芽」が出てきた。

想像も予想もしなかった事態が起きてきたのだ。

      ☆     ☆     ☆

夫は私と違って、人間関係に無関心だ。文章を書くこともきらいだ。

本や新聞なんて、まったく読まない。だから知識なんていうのもない。

もっぱら関心事は自然現象とか技術的なことそして音楽。

書斎派ではなく、器用で何でもこなしてしまう技術屋さん。

それが最近、ヤフーの知恵袋とかいうサイトで 人生相談の回答者を

やっていて、つぎつぎに ベストアンサーに選ばれるのだ。

最初は建築関係の相談にのっていたのだが、建築関係の

相談って想像以上にやる意味がないらしい。

そこでだんだん人生相談のほうに移っていったという。

ベストアンサーに選ばれるのは、それなりに大変だ。

私が読ませてもらっても「う~ん、うまい!」と思う。

本人は、今書くことがおもしろくておもしろくて仕方ないという、そしてつぎつぎ

ベストアンサーに選ばれていく。

回答は「なるほど」と納得がいったりする。

味やロマンがある。説得力がある。

時にはユーモアがあって。

余計な知識がなくて、自分の感性を頼りに生きてきたからこその

シンプルさと合理性。

       ☆     ☆     ☆

私たち夫婦は 10年前にインターネットの結婚相談所というサイトで

知り合って結婚した。

考えてみれば、夫の書いた自己紹介の文章に感じるものあって

ひっかかったのは(だまされたのは)私のほうだ。

そして私が出したメールの返事にも、誠実さや優しさや知恵など

感じるものがあって、メール経験の多かった私は「うん、間違いない」と

結婚を決めた、といういきさつがある(私の勘の良さは、知る人ぞ知る)

あのとき、夫の才能はすでに片鱗を見せていたのだ。

そして8年間はおとなしくねむっていたのだ。

文章には、夫のシンプルで誠実でロマンチックな性格が

もろに出ている。

      ☆     ☆     ☆

人の才能とは、咲かせようと思って咲かせられるものではない。

まわりがどう育ててあげようというものでもない。

気がついたら「咲いていた」という不思議な代物だと思う。

        ☆     ☆     ☆

「わたしも」と思わぬわけではない。

わたしの考えでは「自分では気づかぬ」ものだから、いつか

何かで花開くのを楽しみに待つとするか。

死ぬまでに間に合うも良し。

間に合わぬも良しとしよう。