春なお遠し

福島原発の、津波による損傷は、ひょっとしたら建築の甘さかもしれない。

しかし最高に譲歩して、それは仕方なかったとしてさえ、その後の対応は

あきらかにお粗末のかぎりだ。

しかし、東電の体質も、管内閣の優柔不断さも、

私と同じ、日本人の体質である。

石原知事が「今回の災害は天罰だ」と言って批判された。

どういう意味か理解に苦しむ。

しかし石原知事含め、私も、あなたも。

すべての人に天罰がくだったのだと石原さんが反省したのだとしたら

すごい名言だ。

「あの時、反対してたのに」も「これからは反対しよう」も意味がない。

今、たった今。

反対したり、なんとかせよ、と怒鳴りこまないと意味がない。

        ☆    ☆    ☆

以前に勤めていた病院は、古い体質だった。

私の意見などまったく通らず、私はかわされてばかりいた。

夫に「先生のご意見はとてももっともです。いい考えですので

ぜひ次から取り入れさせてもらいます」と言われて逃げられてしまうと。

夫に言うと。

「今決めていることは、昨日のことじゃなくて、これからのことを

決めているわけでしょう。これから取り入れてくれるというのなら、

これからのことを決めている今日、今、私の意見を取り入れてくれなかった

意味がないでしょう、と言え!」と一喝された。

ひどいことを発言するナースのことを院長に言いに行くと、いつも

「すみませんね」と丁重に謝られて終わってしまう。

それを夫に言うと。

「わかりました。今回は我慢します。しかし 今度同じことがおきたら

そのナースをやめさせるか、私をやめさせるか、どちらかにしてください、と言え!

それくらい言わなかったら、毎回のらりくらりだ」

と言われた。

「でもねえ。なんとなく、嫌味みたいに言われると、怒るわけにもいかず・・・」と言うと。

「それなら、それって嫌味ですか。それともご意見ですか。書かないと忘れるから

書いときます。嫌味、とか 意見とつけ加えますので、そこははっきりさせてくださいね、と

言え!」と言う。

私は口が立たず、黙りこむほうなので、一生懸命夫の言うことをメモして

練習した。

意見を持つこと。

それをきちんと伝えること。

職場の愚痴や夫婦喧嘩のことを後で言うと。

夫には「その場できちんと言えなかったのなら、自分には言う能力が

なかったのだとあきらめろ。その場でその相手に即、言え!」と言われている。

ところで口達者な夫と口下手な私の攻防戦は、少しづつ私も力をつけてきている。

夫婦間で圧倒的経済力を誇る私にして、口下手というだけで不利である。

どんな立場にあろうとも、言うべきことはその場で言うべきである。

後で愚痴る場合には

「これはね、能力がないまま相手を甘やかせてしまった私の愚痴なの。

聞いてくれる?」とことわってから手短かに話そう。

周囲はボランティアすると思って聞いてくれてるのだから。

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「だから原発は反対だったんだよっ!」と口角泡を飛ばしテレビに向かって興奮する夫。

結婚10年になった妻は、すでに初々しい気持ちも枯れているので

内心「あとで言っても駄目よ。今日の思いは今日言いに行かなくては」

と思いつつも黙りこむ。