最後の診察

今日はA総合病院での最後の診察日だった。

ひとりひとり丁寧に丁寧に診ていった。

A病院に残る人、私のいるB病院に来る人、まったく別の病院に紹介する人。

それぞれを丁寧に分けていく。

泣く人が何人もいた。

別れが悲しいからではない。状態が悪くて、だ。

そんな人には「B病院にいるからいつでも電話してね」となぐさめた。

何時間もかかって診察を終えるとすごくほっとして肩の荷がおりた。でもちょっとさびしかった。

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夜に、歓送迎会があった。

新しい先生は、若くてとても素敵な男の先生だった。

私はキャリア40年。その先生はたった数年。

でも私が院長であっても、その若い先生を採用すると思った。

若いっていいなあと思えた。私の役割が終わったことをつくづく感じた。

みんなが別れをとても惜しんでくれた。

「惜しまれるうちに去る」これもまたなかなか出来ないことだと思えた。

A病院の4年は、私の人生でもっとも充実した4年だった。本当はやめたくなかった。

ピアノを弾いたのも。写真展をしたのも。フォトエッセイ集を作ったのもこの病院だった。

でも去る時期が来たのだから仕方ない。

若い先生に来ていただいたことで、7年間、ほとんどひとりで切り盛りし続けた年配の先生の

うれしそうな顔が私には一番うれしかった。本当にうれしそうだった。

仕事をやめるわけにいかないので、明日からまた新しい戦いが始まる。

私の年齢で新しい環境になじみながら仕事を作っていくことはきびしいことではある。

また楽しみながら挑戦をしていきたい。