中学生で受けた「日記療法」

今、球技大会のことでクラスがもめています。今日はちいさなけんかになりました。
わざわいは口からと言うが、Y子さんも私ももうちょっと口をつつしんでいれば
良かった。
私たちはよくけんかみたいになる。けれど、わたしはあとまでネチネチしない
ほうである。
今回もなんとも思っていなかったのに、Y子さんが私とはもう口を聞かないと
いうので困っています。
声をかけても、ロクに口をきいてくれません。そこで私も腹をたてて、口を
聞かなくなりました。
今日も仲良くしようと思って近づいていったら、廊下でであっても、こちらを見て
じっとにらんだのでわたしはつい声をかけそびれてしまいました。
こんな喧嘩はもうしたくないと思います。もう口を聞かなくなって
12日にもなるのです。
先生。
今日はこころにわだかまっていたことを全部日記に書いてしまいました。
だから私の心から出てしまったのです。
あしたはもう。わたしとY子さんの明るい笑い声が教室から聞こえてくると思います。
先生、見ててくださいね。
         
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中学二年になった春の日記である。
Y子さんとはそのころの一番の仲良しで、東京に住んでいるので、
今も続くおつきあいがある。ときどきお手紙もいただく。
このブログも読んでくれていると思う。
毎日の日記に、赤ペンで先生の丁寧なコメントがつけられている。
友達とのいざこざ。
気分がすぐれなかった日のこと。
つばめが巣を作ったこと。
なんでも話せて、心から笑える家庭を作るのが夢だというようなこと。
家庭が不幸なので、かわいそうだと思う友達のこと。
進路の相談。
      
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「毎日、この日記でけんかがおこる。
「なあ、見せてんか」と誰かが言う。「いやや」ともうひとりが言う。
見せて、見せないでの喧嘩が毎日2回はおきる。
女の子は本当にねちねちとなんでも喧嘩の種にしてしまう。
そして、泣いたり笑ったりをくりかえしている。
わたしはあっさりした性格だし、なんでもしんぼう、しんぼうと言い聞かせて
いるのだけど、見てるだけでも大変です。
先生、わたしは男の子に生まれてきたかったです。
男の子はなんでもすっきりさっぱりとしているのでいいなあと思う。
神様、今度生まれてくるときは、男の人間にしてください。

なんていうのもあって、笑ってしまった。
先生のコメントは「男、女は人間の宿命だから仕方ないよ」と書いてあった。

中学1年から3年間、こんなにしあわせな出会い(先生と生徒)があったことに
心から感謝した。
       
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感謝という言葉はこんなときこそ使いたい。