お里帰り

5ケ月前まで勤めていた病院に行った。
やめた職場には行かない主義である。小姑みたいで嫌だ。
だけど、本を届ける約束があったので、行った。

玄関ホールで、音楽療法士の方がピアノを弾いていた。
私のいたときにはなかったことだ。
ピアノが好きなこともあって、私も聴いた。
こころがほろっとして、おセンチになった。

昨日まで一緒に働いていたみたいに、皆が集まってくれた。
本を楽しみにしてくれている方がいっぱいいて、感激した。
あまり、歓待してもらったので、もう二度と行けないと思った。
今日は、仕事に支障があっただろう。

私の写真と言葉をあわせてポストカードが作られていた。
退院患者さんに一年間、一万人に配るという。
まあ、おもしろいことを考えたものだと思う。
わたしの名前がしっかり入っていて。
「前精神科医」と書かれていた。

たった4年間しかいなかったが、この病院で、私は変身した。

  ♥   ♥  ♥

本を作ったのは、ほんの入り口よ。

これから飛ぶのよ。

インターネットで開業するの。開業は3回目よ。

   ♥   ♥   ♥

そういうとみんな目を丸くした。
別に強がって言ったわけではない。
自分に言いきかせている。

帰りの道はさわやかな秋晴れだった。
黄色コスモスが咲き乱れていた。
八ケ岳がめずらしくくっきり見えた。